久住だからこその美味しさが詰まった「風とたまご」を多くの人へ
―お店を立ち上げようと思われた経緯を教えてください。
もともとは卵の販売のみをおこなっていました。
養鶏場で直売していたのですが、ちょうど2011年頃から鳥インフルエンザの影響で対面販売が難しくなり、農場の直売も自販機に切り替わる中で、お客様との接点が失われていく危機感を抱いていました。
お客様の声を聞けることは、私たちのやりがいの源(みなもと)ですし、多くの人が行き交う場が竹田にあれば、この地域をより豊かにできる。
そんなさまざまな思いが結実し、カフェの誕生へと繋がっていきました。
― 「地域の豊かさ」について具体的に考えていたことはありますか?
養鶏場であるグリーンファーム久住、私たちの養鶏の歴史は祖父の代に始まりました。
創業当時も「この竹田という地域をどうすればもっと豊かにできるか」を考え、「高付加価値の卵の製造で地域を盛り上げたい」いう想いがあったと聞いています。
私も久住の自然が好きで、やはり地域全体を豊かにしていきたい、その想いをどう持続させていくかという気持ちが常にありました。
また、地域の豊かさや発展を考えていく中で、大切なことは『雇用』だと思っています。田舎は雇用自体が少ないということと、「地元は好きだけど仕事がないから(離れざるを得ない)」という話もよく聞いていて、それを克服したいという気持ちが以前からありました。「この職場だから働きたい」「この会社で働くために、県外から移住してきた」というように、選ばれるような“良質な雇用”を田舎でも生み出せることを証明したいと思っていたんです。
そこに掛け算になったのが職場と家庭以外の“ちょっとした居場所づくり”でした。
私がグリーンファーム久住を継ぐ前は東京で働いていたのですが、カフェのような寛げる場所は至る所にありました。けれど、私が帰って来た時、竹田にはそういう場所がほとんどないことに気づいたんです。
そういう“第三の場所”があれば、地元の人たちの生活にちょっとした豊かさも生まれますし、竹田を気に入ってくれた人が「移住したい」と思ってくれる、そんな一つのきっかけになるのではないかと。
雇用も生まれますし、自分たちの卵を発信する場所にもなれる、いろんな課題とやりたいことを一緒に鍋に入れてこうやって煮込んで、出てきたのがカフェ『カプリセス』や『とりtoたまご』です。
大分県竹田市に誕生した“第三の場所”、カフェ「カプリセス」
―「カプリセス」の誕生について詳しく教えてください。
カプリセス(caprices)は「気まま」という意味です。
子育てや家事に忙しいお母さんたちが少しでも自分のペースで寛げる場所であってほしい、そんな想いを込めてつけました。
立ち上げ当時、妻が妊娠中だったこともあり、子育て中のお母さんが過ごしやすい空間にこだわりました。
メニューは新鮮な卵を贅沢に使った食事、スイーツなど豊富に揃えています。また、赤ちゃんと一緒でも安心できるよう、授乳室やおむつ交換台も完備しました。
今は『風のたまご』の美味しさを感じてもらえるようなメニューをさらに増やし、平日は地元の方、休日は市外の方で賑わっています。
近くには公園があり、店内のテラス席からは川を眺めることもできます。食事が健康的で美味しいのはもちろん、お子さま連れの方や、愛犬との散歩がてら寄ってくださる方も多く、思い描いていた「誰もが気軽にいける店」が実現できていることが嬉しいです。
竹田の風の音とともに“進化し続ける店” 「とりtoたまご」
―カプリセスの次にオープンした「とりtoたまご」は、どのようなお店でしょうか?
はい。直営店2号店となる「とりtoたまご」は、グリーンファーム久住自慢の『風のたまご』をたっぷりと使ったスイーツや加工品を販売しています。
養鶏場直営だからこそお届けできる、新鮮な卵を主役にしたスイーツは、出来るだけシンプルな素材を組み合わせ、たまごの美味しさを感じていただける味を目指しています。
⇒ 養鶏場のプリン 商品ページ
食の安全を追求するのは当然のことですが、より納得していただくためにオープンキッチンを採用し、作る過程を常にお客さまへ公開するような設計にしました。
また、お店作りにおいて「竹田のまちに馴染む心地よさ」を大切にしています。店内のBGMもオリジナルで、竹田の風の音、虫の鳴き声、川のせせらぎをモチーフにしています。
店内にいてふと耳に入る音が心地よいとリラックスできますし、そういったことが“ほっとできる第三の場所”に繋がっていくと考えています。
―『風のたまご』を使ったスイーツは何が売れていますか?
一番人気は黄身をたっぷりと使った、なめらかなプリンです。
『風のたまご』のおいしさを存分に味わうことができる逸品です。また、最近人気急上昇中なのが『エッグドーナツ』で、プリンよりも販売個数が伸びたこともあるファンの多い商品です。
卵の香りがふわっと広がるドーナツは、重すぎず「これなら何個でも食べられる」と甘いものが苦手な方からも好評です。
珍しいものだと、大分の特産品である『かぼす』を使用したプリンや焼き菓子もあります。
卵の濃厚なコクと、かぼすの爽やかさが絶妙にマッチしていると、竹田ならではの味わいとして喜ばれている商品です。
健やかな親鶏が育む、生命力あふれる「風のたまご」。
手間暇を惜しまないグリーンファームの裏側
―原材料である「風のたまご」の由来を教えてください。
原材料の『風のたまご』は、私たちの養鶏場『グリーンファーム久住』で生まれたものです。
『風』と付けたのは“自分たちならでは”を研ぎ澄ませていった結果、この名前に辿り着きました。
まず一つ目はグリーンファーム久住を囲む大自然“久住高原の風”です。二つ目は飼育環境へのメッセージを込めています。卵の生産は全て『開放型鶏舎』という、外の景色が見える明るい鶏舎で育てています。
心地よい風が吹き込み、のびのびと鶏たちが過ごしている、そんな環境を感じる『風』です。
三つ目は味について。うちの卵は卵特有の臭みがほとんどないのが特徴です。食べた時のほかにはない爽やかさに“高原の風”をイメージしてもらえたら、という想いを込めています。
このように、色々な意味を込めて誕生したのが『風のたまご』なんです。
―のびのびと育てるために気を付けていることはありますか?
良い卵は、母鶏が健康であることから生まれます。
実は養鶏場がひよこから育てているケースは意外と少ないんです。私たちはひよこの時から一羽一羽の健康状態を確認して、成長に合わせて鶏舎の温度や餌の場所、歩き回れる範囲を1日単位で細かく見て、ストレスがかからないようにしています。
鶏たちは、まさに自然に近い状態。広々とした平飼いの環境で、昼間は砂浴びや羽ばたきを楽しみ、夜は止まり木の上で眠ります。
止まり木で寝かせるには「寝かしつけ」の訓練が必要なので、大変ではあるのですが、地面で寝ると体温を奪われて体調を崩しやすいため、生後 1 週間後から止まり木に止まることを教え込みます。
これも、鶏への愛情が深いグリーンファーム久住ならではの手間暇だと思っています。
―平飼いで育てることについて、大変だと感じたことはありますか?
祖父の代から続けているので、あまり大変だという実感はないです。一般的なケージ飼いの養鶏場ですと、一羽一羽に目を向けることは難しいかもしれませんが平飼いだと鶏と対峙できます。
鶏舎に入ると後ろをずっとついてきますし、気に入らないことがあると普段と違う行動をとったりします。
その理由を探すために、私たちも鶏たちをじっくり観察する……ちゃんと生き物を飼っているという実感があります。働いている私たちも、心が豊かになるような気がしますね。
私は「鶏に報いる」という言葉を大事にしていて、人間のために命を繋いでくれる鶏に対して、養鶏場として報いる義務があると思っています。
そのためにも、卵産むために生まれてきたのだから、しっかりと卵が産める健康な体に育ててあげる。それが、私たちの責任だと思っています。
水、餌、国産への徹底したこだわり。3種の特徴
―卵の味に一番影響するのは何でしょうか?
水と餌です。卵の7割から8割は水分です。一般的な養鶏場では水道水を使うことが多いかと思いますが、私たちの場合は久住高原で磨かれた地下水を汲み上げ、毎日それを鶏たちが飲んでいます。
餌も17種以上の原料を配合した栄養たっぷりの飼料を食べて育ち、餌と水を厳選していますので、雑味や生臭さがなく、濃厚なコクと旨味が詰まっています。
『風のたまご平飼いたまご』の餌は、主要原料の穀物は100%国産です。(穀物以外においても、一部国内で調達が難しい原料を除いて 98%が国産)。
大規模養鶏場の飼料でこれだけの国産率を果たせているものは、現在ほとんど市場にはないと思います。
卵を割ってみると、黄身と白身がこんもりと盛り上がり、白身が黄身に覆いかぶさるほど弾力があります。
これは、親鶏が健やかに育った証で、その味は格別です。
白身にも旨味があるため、料理やお菓子に使う時も、その差は歴然です。
⇒ 風のたまご 商品ページ
―『風のたまご』は3種類ありますが、それぞれの違いをより詳しく教えてください
『風のたまごBasic』は、明るく風通しの良い鶏舎で育った、味のバランスが良いスタンダードな卵です。
産卵期のみ解放型ケージで飼育することで、安定した品質をお届けしています。
『風のたまご平飼い有精卵』は、創業当時から守り続けている、雄と雌を一緒に平飼いで育てる全国的にも希少な有精卵です。
自然に近い環境で育つため、しっかりとした甘みと濃厚な味わいが特徴です。
『風のたまご平飼いたまご』は、与える飼料の98%を国産にこだわったプレミアムな卵です。
口に入れた瞬間に広がる旨みと、スッキリとした後味が人気です。
どれも自慢ですが、特に有精卵はスーパーではなかなか手に入らない珍しい卵ですので、いつもと違う特別な食卓を楽しみたい方におすすめしています。
竹田市のお日さまのような存在「とりtoたまご」が描くこれから
―グリーンファーム久住、そしてお店が歩む「これから」の景色を教えてください。
こだわりの卵を心から求めていらっしゃる方はたくさんいると思っています。だからこそ、その方々にどうすれば届けることができるか、私たちは常に自問自答しています。
実店舗である『とりtoたまご』が誕生したことで、新たな販路が広がり、今回こうして『にじデパート』さんとのご縁にも繋がりました。
私たちの想いに共感し、「この卵を広めたい」と言ってくださる方々と手を取り合い、求めている方へと届く道を、これからも丁寧に繋いでいきたいと考えています。
あとは、何より「地元の方に喜んでほしい」という想いがあります。
商品構成はもちろん、サービスのクオリティをさらに磨き、どうすればお客様のご要望に寄り添えるかを追求していきたいです。
健やかな鶏を育てるという原点を守り、真摯にものづくりに取り組んでいくことが良い循環に繋がると信じています。
そうすることで「ここで働きたい」という人が増え、自然と良い人材が集まる――その「プラスの連鎖」が、竹田のまちをより活性化してくれるはずです。
編集後記
久住高原の心地よい風の中で育った『風のたまご』。
その卵が生まれた場所を訪れ、何よりも心に響いたのは“おいしい卵を届ける”ために、鶏・人・環境、すべてに真摯に向き合い続けるグリーンファーム久住の在り方でした。
健やかな卵を生み出す「グリーンファーム久住」。
その卵を主役に、新たな魅力を引き出し
お客さまへ届ける「とりtoたまご」。
卵の美味しさを通じて心地よい時間と空間を分かち合う「カプリセス」。
「竹田のまちが好き」という荒牧代表の真っ直ぐな想いは、生産者と消費者を結び、雇用を育み、人と人をしっかりと繋いでいます。
まるで街全体を優しく照らす「お日さま」の卵のような、温かさ。
グリーンファーム久住の創業当初から受け継がれてきた「竹田のまちを豊かにしたい」という光は、これからもこの街を明るく導き、豊かな連鎖をどこまでも広げていくはずです。