6代続く果物職人が育てる不知火とシャインマスカット|松川果樹園
熊本県宇城市・不知火町松合に根ざし、果物づくりを受け継ぐ松川果樹園。
甘くみずみずしい『不知火』や『シャインマスカット』をはじめ、土地の恵みと果物職人の技が詰まった果物は、多くの人を魅了し続けています。元市役所職員という経歴を持つ6代目・松川武蔵さんは、伝統を守りながらも新たな挑戦を重ね、農業と地域を元気にする取り組みにも奔走中。
そんな松川果樹園の魅力と、松川さんが描く“果樹園の未来”をご紹介します。
デコポン発祥の地「不知火」を全国に広めるために
熊本県宇城市不知火町松合は、江戸から明治時代にかけて栄えた港町であり、その歴史的な背景を今に伝える漆喰塗りの商家風建築が現存しています。この地域は平地が少なく、独特な地形が特徴です。
明治時代までは漁業が主な生業でしたが、現在ではその地形を生かし、海からの反射光を利用した農業が盛んに行われています。
松川果樹園は、この豊かな土地で育まれた果物を、代々伝わる技術で栽培しています。
松川果樹園は不知火町松合で代々続く果樹園です。
6代目の松川武蔵さんは受け継がれてきた肥沃な土地と確かな技術を活かし、巨峰やシャインマスカット、不知火、温州みかんなどを栽培しています。四季折々に収穫される果実には、ひとつひとつに手間と愛情が込められており、その美味しさはどれも格別です。
松川さんは1年を通して果物栽培に力を注ぐ中で、自社商品だけでなく、松合地区の不知火ブランドの認知度向上にも力を入れています。
受け継いできた果物の栽培方法や、地区の特産品である不知火、さらに町おこしに対する松川さんの想いについて、広くお話しを伺いました。
ジューシーさが際立つ『不知火』は長年の技の賜物
― 不知火について教えてください
『不知火』とは、『清見』と『ポンカン』の交配種として生まれた柑橘で、甘みが強く、贈答品としても人気があります。『デコポン』という名前のほうがメジャーかもしれません。
JAから出荷された全国統一基準を満たす果実が『デコポン』という名前で発売されますが、実は美味しさは『不知火』も同じなんです。
そしてその名前からも分かるように、不知火町は『不知火』発祥の地です。
不知火海からの太陽の反射があるおかげで気候が良く、柑橘栽培に適した環境が『不知火』のジューシーな果肉を育んでいます。
太陽からの光と海からの反射の光、さらには園内の石垣からの照り返しの光と、十分な光を受けることにより甘みと酸味のバランスが絶妙な『不知火』が育ち、口に含むとみずみずしさが際立ちます。
水分をたっぷり含んだずっしりとした重みのある不知火は、贈答品としても人気の品です。
代々引き継がれた肥えた土が最高の巨峰、シャインマスカットを育む
― 松川果樹園で人気の高い葡萄について、栽培で気を付けていることはありますか?
巨峰の間引き作業
巨峰やシャインマスカットは気の遠くなるような地道な作業を繰り返しです。
店頭で販売されているものは美しい形をしていますが、それはひとつひとつ間引きをして、粒が大きく育つように調整しているからです。
また色鮮やかな美しさを保つためには、日焼けを防止する袋がけの作業も欠かせません。
葡萄は私の祖父の代からはじまり、その技も代々受け継がれてきました。
時代の移り変わりとともに栽培方法も変え、はじめは自然形仕立てで行っていた剪定も、今は樹形が安定するWH型樹形を取り入れています。
このやり方は年月を要しますが、作業効率が良いため一房一房に魂込めて作業をおこなうことができます。
また「作物は土が命」というように、祖父よりずっと前の代から手入れを欠かさなかった土は果物を生き生きと育ててくれます。
肥えた土で育った巨峰やシャインマスカットは粒が大きくみずみずしさが際立っています。巨峰は濃厚な甘味とコクがあり、マスカットは噛んだ時のパリッとした食感と上品な甘さが特徴です。
どちらも魅力を十分に引き出せているのは、受け継いできた土地と技術によるものが大きいと思っています。
巨峰やシャインマスカットは新鮮なうちに選別し、採れたての新鮮さをそのままにクール便でお届けしています。
前職の経験を生かして 松合の「農家+町おこし」に繋げたい
― いろんな果物を作りながら、地域活性化にも力を注いでいると伺いました
家業を継ぐ前は市役所に勤めていたため、地域の方の相談や教育など、町のために奮闘する毎日を送っていました。
家業を継ぐと決めた時も「今までやってきたことを少しでも継続していきたい!」と思ったことが、“農家+町おこし”のきっかけです。
地域を知ってもらうことは、自分たちが作る果物を知ってもらうことにも繋がっていきますし、農家だけでなく、地域に関わる皆が豊かになれると思っています。
― 松合の『まっちゃ朝市』は珍しいものも多く、大盛況と聞きました
一度コロナで途切れてしまっていた「まっちゃ朝市」も復活しました。“まっちゃ”とは、松合地区の愛称として昔から呼ばれている呼び方です。
朝市は毎月第3日曜、朝6時から新鮮な海の幸や山の幸が商店街の松合本通りに並びます。
珍しい「味噌の詰め放題」や松合の特産「えびだご汁」が人気で、それらを目的に来るお客様も多いです。
最近は地域の若い世代も加わり、朝市ならではの活気もより感じられるようになりました。遠方から足を運ぶ方も増え不知火をはじめ、地域の特産物も広まっていると感じています。
衰退する農業 その中で自分たちがやれることを考えていく
― これからの農業は、後継者問題など厳しい現状なのでしょうか
今、離農する人が増加傾向にあるのは皆が感じていると思います。その中で、何十年と手塩にかけた土地と技術があって、自分で一から作らなくてもすべてが整っている。農家の後継者問題を考える中で、それらがなくなっていくのはすごく勿体ないと感じています。
まずは私自身がトップランナーとなって「農家って輝いているな」「農家って楽しそうだな」と感じてもらい、就農者が増えるきっかけになれれば嬉しいですし、そう思ってもらえる人物になりたいです。
あと、昔と違う点として機械に頼れる部分が今は多くあります。
例えば、センサーを搭載し自動で温度管理、雨が降ると換気用フィルムが閉まるような設定をハウス内で取り入れたりもしています。
このように機械に任せられる部分は任せつつ、自分や家族、従業員も働きやすくなるように、そして「継いでもいいかな」と言ってもらえるように、農家の良い形を作っていきたいです。
そのためにもまずは自分自身が、先代から受け継いだものをより良い進化を続け「また来年も食べたい!」と思ってもらえるような美味しい果物を作り続けていきます。